子どもの強迫性障害(OCD)の改善には、家族のメンタルヘルスの安定が重要になります。「OCD」は子どもに“手をたくさん洗わないとバイ菌がついて大変なことになる”などのような強迫観念を植え付けてきます。それに対して、子どもは手を洗うといった強迫行為によって「OCD」から逃げようとしますが、実はそれは「OCD」の思うつぼであり、このような回避行動は“敵に塩を送る行為”となってしまいます。
同じように家族による子どもへの叱責も「OCD」の栄養となってしまいます。強迫性障害の改善のプロセスとは、いわば子どもと家族とカウンセラーとの間で援助同盟を結び「OCD」と戦う作業だといえます。つまり“「OCD」VS 同盟軍 ”といった構図を作ることが大切なのです。しかし家族による子どもへの叱責は、その戦いの構図を“「OCD」&家族 VS子ども ”という形に変えてしまい、子ども側の戦力が削がれ「OCD」に対抗する力が失われてしまいます。これは「OCD」の謀略であり、家族は良かれと思ってやっている叱責がかえって「OCD」の戦力を増やすことにつながってしまうのです。
また、中には強迫行為を家族に代行してもらうといった巻き込み行動をとる子どももいます。強迫性障害の子どもは「OCD」に支配されてしまっている状況です。「OCD」は貪欲なので、子どもだけでは飽きたらず、家族のことも子どもを通して自らの支配下に入れようと企んできます。その戦略が巻き込み行動です。そのため、家族が子どもの強迫行為を代わりに行うことで結果的に「OCD」の支配権が広がり、同盟軍成立の妨げになってしまいます。
強迫性障害の改善の第一歩は「OCD」の支配下から独立運動を起こすところから始めます。しかし、子どもや家族は今まで「OCD」の支配下でへとへとになるまで働かされ続けていたのでそんな抵抗をする余力がないかもしれません。それは当然のことです。そこで私たちカウンセラーの出番になります。とはいえ、私たちは一人で「OCD」をやっつけるヒーローではありません。あくまで子どもと家族をサポートしていく存在です。
当オフィスでは、子どもへの支援はもちろん、それを支える家族のメンタルヘルスのサポートも同じくらい重要だと考えております。「OCD」に対抗する同盟軍の力を高めるには家族の心のエネルギーの回復も必要不可欠です。まずは家族の方だけの相談でも大丈夫ですので、一緒に「OCD」への対抗策を考えていきましょう。
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